私たちは、部屋に入るとその空間の音や声の響き方を本能的に感じ取っています。たとえば、天井が高く壁面が固い素材の広い空間では、声やノイズが反響して不快な雰囲気を作り出す可能性があります。音響処理が施されていないオフィスでは、音を跳ね返す硬い表面や物体があると、これと同じ効果を生み出すことが考えられます。一例として、ガラス壁やホワイトボード、大型のコンピューターやプレゼンテーション用スクリーンなどが挙げられます。
脳が正確な音像を構築するには、音環境の質が大きく影響することが神経科医によって証明されています。これを理解するためには、音のふるまいについて、科学的に見ていく必要があります。小会議室やハドルルームでも、最初の音波よりも遅れて私たちの脳に届く、反響した音波が存在します。音は毎秒約344 mの速さで進むため、約6 mの大きさの部屋では、音波が両側の壁の間を1秒間に約55回往復することになります。
音は全方向に拡がるため、反射面の多い部屋では反響した音が混ざり合い、相互に干渉します。こうした反響が起こると、たとえ室内に数人しかいなくても声を明確に聞き取ることが難しくなります。音響処理のオプションは年々進歩しており、現在では目立たず洗練された外観で音の反響を低減できるようになりました。
オフィスや商業施設向けの業務用防音材は、吸収する音のエネルギー量を示すノイズ低減係数(NRC)(0.00~1.00+)で評価されています。NRCが0.75以上、つまり付近で発生した音のエネルギーを75%以上吸収する素材は、騒音の対処に非常に効果的であるとされています。
会議室の音響処理は、サウンドマスキング、防音、吸音の3つのカテゴリーに分類されます。サウンドマスキングには、ホワイトノイズ発生器や、音で室内の音を遮断するスピーカーなどのオプションがあります。防音には、防音壁や防音窓など、室内の構造や設計を含めたオプションがあります。吸音には、吸音タイルを使用した吊り天井、音響バッフルやパーティション、ドアや壁に取り付ける音響パネル(発泡材からデザイン性の高いアートパネルなど)、消音カーテンなどがあります。
吸音天井タイルは、吊り天井が既存の空調設備や規制要件と適合する場合にもっとも一般的な吸音オプションの一つです。タイルが音を吸収することで、室内の不要な反響を抑制します。また、隣接した部屋への音漏れを最小限に抑え、周囲へのノイズを低減することもできます。
パネルは、音のエネルギーを受けて素材の繊維や小さな穴が振動することで、周囲の孔や繊維との摩擦が大きくなり、音エネルギーを熱エネルギーに変換します。このエネルギーは、付近にある元の音エネルギーに跳ね返ることなく、すばやく消散します。