新テクノロジー導入へのステップ:

経営陣への提案方法

チェスター・カールソン氏が1930年代後半にゼログラフィを発明し、さらに10年以上に及ぶ改良を経て今日私たちの知るゼロックスが誕生しました。しかし当時、IBMやEastman Kodakといった多くの有名企業がこの概念をすぐには受け入れず、最終的にオフィス向けのコピー機として普及するのは1960年代までかかることになります。なぜなら、カーボン紙による複写に慣れた企業に対して、この新技術の価値を―どのくらい効率を改善し生産性を上げ、ROIを高め、大幅なコスト削減につながるかを―説明するには、長い時間がかかったからです。

新システム導入時のこうした背景のストーリーに焦点が当たることはあまりありません。しかし、例えばIT担当の先達たちは、今は当たり前に社内にあるコピー機やパソコン、カメラなどを初めて導入する時、自社の経営陣に対して「新たなテクノロジーを導入することが企業にもたらす価値」を概念的なレベルから説明しなければならなかったはずです。それは今日のIT担当者も同様で、新しいテクノロジーの価値を説明する必要があることに変わりはありません。現代の業務向けテクノロジーは多様かつ複雑なため、さらに思慮深い計画が必要になります。ここからは、そのために役立つステップをいくつかご紹介します。

1. 自身のチームを味方に

まずは、チームの皆が新しいテクノロジーソリューションの必要性、その使い方、そしてそれがどのように生産性を向上させるかについて、理解していることが重要です。チーム内でテクノロジーに最も積極的なのが自分であっても、チーム全員の理解を得ておくことで、経営陣への主張もずっと説得力のあるものになります。最初にチームメンバーにシステムやそのメリットについて、しっかりと説明しましょう(これは、実際に経営陣へ提案する前の練習としても役立つでしょう)。

たとえば;。チームに対して、新たなテクノロジーを採用し適応することが、コロナ後の職場環境に欠かせないことを説明します。2020年のDeloitteによる分析によると、パンデミックの発生以降、オフィスワーカーの75%が、業務のために少なくとも2種類の新たなテクノロジーを導入していることが分かっています。

会議室で、協力して提案の準備をしているITチーム。

経営陣に説得力のある提案をするには、まずチームと協力して質問を想定し、新たなテクノロジー導入が業務にどのような価値をもたらすかを示す最適な方法を見極めることから始まります。

2. 経営陣への提案に向けて

Harvard Business Reviewによるビジネスに新たなテクノロジーを導入することに関する記事では、営業というよりは、マーケティング的アプローチに近いと述べています。要約すると、記事では、営業は「1度で完結」する一方、マーケティングのアプローチでは、ベンダー(自身や自身のIT部門)と顧客(経営陣)がチームとして連携する必要があることを主張しています。新テクノロジーの導入は、単一の計画ではなく、全員がメリットを享受できるよう全員が参加すべきプロセスなのです。行動を起こすには、今が最適です。2022年のIT予算は、ここ10年以上においてかつてないペースで増加すると予想されているからです。

質問を予測する

新たなテクノロジーの詳細を自身が把握しておくことも大切ですが、同時に「相手が何を知らないか」を理解しておくことも重要です。相手の質問を予測しておくことで、提案の際にスムーズに受け答えができます。新しいテクノロジーの魅力を伝える方法として、身近なデバイスやテクノロジーを例に挙げ類似性を強調することが有効です。たとえば;

  • 例1:デバイスの場合、Bose Videobar VB1のような機能を1台に集約したビデオバー(4K対応ウルトラHDカメラ、6つのビームステアリングマイク、スピーカーが一つのユニットに収められ、独自のDSPとソフトウェアにより管理されている)は、機能を羅列していけば最初は複雑な印象があるかもしれません。しかし、製品のコンセプトは「コンパクトで、手頃な価格帯で、必要な機能が1台に収められた使いやすいデバイス」であり、それは家庭に普及しているサウンドバーのコンセプトと同じです。
  • 例2:ストレージの場合、たとえば、オフィスのデータをクラウドベースのストレージに移行することを検討しているとしたら、すでに社員は各自のスマートフォンで同様の作業を実行していて慣れている可能性が高いと説明ができるでしょう。
  • このように、新しいテクノロジーはユーザーにとっての使いやすさを強調するとよいでしょう。往々にして、新しい技術や見慣れないインターフェースは、とっつきにくさを感じさせるものです。新システムを、既存のワークフローにどのように導入および統合するのかも説明できるようにしておきましょう。また、導入後どのようにトレーニングを行うかも説明するようにしましょう。

コストを把握しておく

新システムのコスト効率やROIを検証する際には、金額や具体的な数値を提示できるようにしておきましょう。新テクノロジー導入の際、特に経済面の説明に役立つ通式があります。CSOによる記事では、次を推奨しています。「ROIは、2通り算出することを検討しましょう。1つは予測されるROI、もう1つは最悪のシナリオです」。誰も最悪の結果を提示したくはないし聞きたくもないでしょうが、一方でこれには潜在意識に訴える2つのメリットがあります。まず、偏見なしで公平に調査をしている事を示唆できます。さらに、最悪のシナリオと比較することで肯定的なシナリオのROIがより魅力的に見えるのです。

支持者を見つける

上層部はやや官僚的な印象があるかもしれませんが、彼らも個人の集まりです。そのうちの少なくとも1人は、あなたのITチームが提案するテクノロジーに共感してくれるかもしれません。もし社内の経営陣にCTOやCIOがいる場合、その人があなたのチームと経営陣との理想的な橋渡し役となってくれるかもしれません。特に、その人がかつて現場でIT担当を経験しているならなおさらです。

経営陣にも参加してもらう

新テクノロジーの導入が決まったら、経営陣にその成功を見届けてもらうことで、導入過程はずっとスムーズになります。つまり、導入から統合プロセスまで、経営陣を巻き込むことが重要なのです。そのためには、スケジュールや予算、その他の主要な情報を記載した定期的なプロジェクトレポートが欠かせないものとなります。

様々なトレーニングを用意する

聴覚的、視覚的、あるいは運動感覚的に学ぶ人など、学習のペースや方法は人によって異なります。このSmartSheetのグラフでは、新しいソフトウェアの理解を表し、業務のための新たなテクノロジーの統合の際の予測を示しています。導入とトレーニングには、時間と計画が必要になります。マニュアルやセミナー、動画など、幅広い教材やオプションを用意して、すべての社員が各自に合ったトレーニングを受けられるように準備しておきましょう。

不安を乗り越える

新システムの導入の際にIT担当者が直面する最大の課題は、システムの不確実性への懸念や、業務に支障が出るのではないかという不安ではないでしょうか。自社の生産性を向上させる新たなテクノロジーを見つけ、チームで協力し、優れた提案をまとめ、技術面および経済面の質問に対する回答を準備し、トレーニングプログラムも用意しました。しかし、経営陣に対して、このプロジェクトが円滑に進行し成功することをどのように保証できるでしょうか?未来は誰にも予測できませんが、前例を指針とすることはできます。Bose Professionalの導入事例では、既存のワークフローに新しいプラットフォームをスムーズに移行した事例を紹介しています。

こうした確実なステップを実践することで、企業に新たなテクノロジーを導入する準備を万全に整えることができます。