バーチャル会議があまり一般的でなかったパンデミック前は、社員の多くがオフィス勤務で会議の際は一つの場所に集まっていました。しかし、当時に設計・設置された旧式のビデオ会議システムでは急増するバーチャル会議に十分に対応できなくなってきています。例えば、クラウドベースの会議プラットフォームへの移行は、従来のオンプレミスシステムよりも多機能で柔軟なデータフローに対応できるようになった代わりに、広い帯域幅を確保する必要がでてきます。
通信に必要な帯域幅が十分に確保できないと、通話が突然切断されたり、パケット損失によってオーディオやビデオの品質が著しく低下したり、資料の共有やデータアップロードの速度低下などの原因となります。こうした問題により日常業務に支障が出ると、企業の業績にも影響を及ぼすことになりかねないため迅速かつ包括的に解決する必要があります。
旧来のビデオ会議システムのネットワーク構成におけるもう一つの問題は、増加する通信負荷に対して従来のアクセスポイントでは対応しきれない可能性があることです。デバイスが接続しやすくスムーズに通信できるネットワーク環境は、ハイブリッドな働き方を支える上で欠かせない要件です。
Wi-Fiを高速(1.2 Gbpsが適当)なものにアップグレードすることで、各アクセスポイントでより多くのデバイスをサポートできるようになります。また、社内の会議スペース増加やあるいはどこでも会議ができるオフィス環境にするために、アクセスポイントの配置も見直すとよいでしょう。それに加え、通常よりエンドポイントの使用頻度が多い会議室や、ビデオストリーミングを使用するデバイスが設置された会議室などは、特に注意が必要です。
2020年の初め、何百万もの従業員が在宅勤務への移行を迫られた当時、多くの企業は応急措置として各社員の手持ちのデバイス経由でバーチャル会議ができるよう、最低限の環境を整備しました。しかし一方で、互換性のない機器を使用すると、リモート会議に支障が出るケースもよく見られます。スムーズに会議ができないと会社のネットワークやシステムが非難されがちですが、実際はユーザー側のデバイスに原因があることも少なくありません。
2020年の初めにZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのリモート会議用プラットフォームが普及し始めた頃、最初に発生した悪意のあるサイバー攻撃の例が「Zoom爆弾」です。これは、会議のログイン情報やアクセスコードが自由に共有されていると、オンラインの侵入者が会議にアクセスできてしまうというものです。この出来事を通して、多くのユーザーが会議情報の取り扱いに厳重な注意が必要であることを学びました。
戦略国際問題研究所は、主要なプロバイダーが導入している暗号化手順が必要な保護を提供できると提言しています。また、米国国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁は、セキュリティ侵害の危険を低減するために以下の基準手順を推奨しています。
- 1.ルーターやネットワークの初期パスワードを変更し、自宅のルーターをWPA2またはWPA3の暗号化標準に設定することで、安全な接続を確保する。
- 2.すべての会議において参加者にアクセスコードやパスワード入力を必須にし、また待機室機能を使用して参加者を事前に管理できるようにする。
- 3.画面共有やファイル共有、その他のミーティング機能の利用を最小限のユーザーに制限する。
- 4.ミーティングツールや関連アプリを常に最新バージョンに保ち、最新の暗号化テクノロジーが適応されるようにする。ソフトウェアの更新を自動にしておくのも良いでしょう。
ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのオンライン会議用プラットフォームは、世界的なリモートワーク拡大を機に無料トライアルなどで新規ユーザーを獲得しさらに会社全体で採用する企業も多く見られます。ITチームは、こうしたさまざまなツールにすばやく適応し、リアルタイムでトラブルシューティングを行わなくてはなりません。
しかしコミュニケーションツールが複数あると、その分管理費用やサポートに要する時間が増えITチームに大きな負担がかかることになります。社員にとってどのツールが最適なのかをよく見極めた上で、組織レベルで導入すべきベスト・ツールを絞り込むことが大切です。
ビデオ会議が普及する現代においてITチームに求められるのは、デバイスやツールの定期的な見直しと、ビジネスを長期的な成功へ導くためのソリューション選びだと言えるでしょう。