概要
ため息の出るような美しさのモスクですが、一方で、他の礼拝施設と同様の深刻な課題を抱えていました。スピーチの明瞭度の低さ、サウンドカバレージのばらつき、サウンドシステムの使いづらさ、といった複数の問題を解決する必要があったのです。ドーム型建築では不可避である残響の多い音響環境や、適切に設計されていないPAシステムが原因で、スピーチの音質が損なわれていました。実際このモスクでは20年以上にわたって3つ以上のメーカーのサウンドシステムを導入してきましたが、なかなかモスクのニーズを満たすものはありませんでした。それだけでなく、これらの非効率的なサウンドシステムが原因で、システムの運用やメンテナンスの煩雑化といった別の問題を引き起こしていたのです。
クアラルンプールを拠点にモスクのシステムを専用に扱うAcousticon社の創業者であり、テクニカルディレクターを務めるアジジ・アラ氏は「モスクの最大の課題は、空間の残響です」と話します。同社は、プトラモスクの音響的欠陥を評価・修正するプロジェクトを受注しました。アジジ・アラ氏が実施した現地の音響テストでは、2.5秒以上の残響があることがわかりました。モスクの美観を損なうような構造物や吸音材を使わずに、この環境を改善する必要がありました。アラ氏は次のように続けます。「課題視されがちなのはドーム部分ですが、建物の内観の表面が硬質であること、礼拝エリアは広く多くの柱があることなども、メインの礼拝堂全体で音の指向性が不均一になる理由です」
MSA12Xは、ボーズ独自のアーティキュレイテッドアレイトランスデューサー方式により、空間全体をカバーするワイドな160°の水平カバレージを実現し、モジュラー方式のデザインで1~3台のユニットを垂直にアレイ構成できます。また、空間のビジュアルを損なわないスリムなデザインが採用されています。さらに、MSA12Xスピーカーは、Acousticon社がプロジェクトの一環として導入したDanteにも対応しています。モスク内部には、4本の大きな柱に合計10台のMSA12Xスピーカーが設置されました。
新しいオーディオシステムは予測どおりの性能を発揮し、モスクの建築にうまく溶け込んでいます。さらに、もう一つ解決すべき「使いやすさ」の課題があります。Acousticon社は、使いやすいQSC Q-SYSインターフェースをプログラムしました。これにより、12.9インチiPadを使用して、Panarayサウンドシステムを直感的に操作できるようになります。基本的なシステムのオン/オフや音量調整だけでなく、特定のゾーンを指定して音を出したり、礼拝や季節の祝典など特定のアクティビティに合わせたプリセットも用意されています。さらにアラ氏は、モスクのイマーム(指導者)やムアッジン(勤行時報係)がそれぞれに適切なオーディオゾーンを有効にできるよう、直感的なGUIディスプレイアイコンを設定しました。